「人は変われる」を体現した友達に私が救われた話【私がいじめをしたときのハナシ⑤】
今までのおハナシは
ずっと背後霊だったコタちゃんを置き去りにして逃げた遠足のあとから、コタちゃんはずっと3か月近く一人ぼっちでした。
でもある日突然、コタちゃんから声をかけてきた。
そんなにちゃんとコタちゃんがしゃべることなんてほとんどなかった上に、今までの経緯があるので、心底びっくりしました。
それと同時に
一気に襲い来る罪悪感…。
しかしコタちゃんは
とても同一人物とは思えないような反応を返してくれたのでした。
な、なにがあった…!?
このとき私たちは、実はコタちゃんはとりつかれたとか入れ替わったとかで別人だと言われたって普通に信じたと思います。
そのくらいコタちゃんは以前とは全然違っていました。
コタちゃんいわく、あの遠足で私たちがダッシュで逃げるまで、私たちに本気で嫌がられているということがわかっていなかったんだそうです。
「一緒にいれば仲良くしている」ことだと、本気で信じていた、と言っていました。
私がなんか言ってても、実感としてよくわからなかったみたい。
今日は機嫌が悪いな?くらいに思っていたみたいでした。
コタちゃんは中学までずっと勉強、勉強で、高校に行きさえすれば自由にできる、と言われて育った子でした。
ずっとそうやってきて、友達ができたことがなかったそうなんですね。
友達と家の行き来をしたこともない。
友達と一緒に遊びに行ったこともほとんどない。
放課後友達と一緒に遊んだことすら、数回しかなかったというんです。
家に帰ったら、勉強するふりして寝てたって。
だから、「友達との付き合い方」が全然わかっていなかった。
コミュニケーションの練習の場がなかった。
いつも誰かと一緒にいる周りの子がうらやましかったけど、高校に行けば自分もそうなれるって信じて、そうやってがんばって勉強してうちの高校に来た子でした。
それで、私に最初に声をかけられて
「そういうものなんだ」と思ってずっとくっついていた…。
だけど、私たちは逃げた。
そこではじめて、自分が何か間違っていたらしいと気づいた。
でも、考えてもわからなかった。
だから、とりあえずアルバイトをしてみることにした。
社会経験をつめば、なにかわかるんじゃないか。
よくすればそこで友達もできるかもしれない。
バイトしている子はみんな、友達付き合いもすごくうまいし。
(コタちゃんはそれまで部活もバイトもしたことがありませんでした。)
そこで彼女はクレープ屋でバイトを始めたそうです。
でも、これが思いのほか厳しかった。
同僚のオバチャンに怒られまくった。
まず挨拶ができない、
返事ができない、
仕事をきくことができない、
仕事を見つけることができない、
自分がどうしたいかも、
今の状況を説明することもできない。
仕事が全然できなかった。
お客さんに怒鳴られたこともあった。
最初はなんで怒鳴られてるのかすらわからなかった。
それでもオバチャンはクビにせず付き合ってくれたそうで、なにが悪いか、どうしたらいいか、いちいち教えてくれたんだそうです。
たぶん、なんでそうなのか、というところまで。
そうしているうちに、「コミュニケーションというものがどういうものなのか」がわかってきた。
わかってきたら、今まで自分がどんなに気持ち悪いことをしていたかがわかってきた…。
いや、彼女もすごい。
そこまでダメダメで怒られまくって、それでもバイトを続けた根性は本当にすごいと思います。
そして、自分をそこまで変えられたことも。
だって、ものの3か月とかそこらの話なんですよ。
バイト始めてからだったら、長くても2か月ちょっと。
それで人って、ここまで変わるのか…。
クラスの全員の女の子がこの変化を驚き、歓迎しました。
だってクラスのだれも、コタちゃんがこんなふうになるなんて、出来るなんて予想もしてなかったんです。
そう、私でさえ。
「自分で声かけて話せばいいじゃない」って思っていた私でさえ、本当はコタちゃんがそんなことできるかもなんて微塵も思っていなかったのかもしれません。
それはそれでヒドイ話だと今となっては思います…。
それからは、コタちゃんはもう表情から全然違いました。
本当に、まさに「さなぎが蝶に」という感じでした。
もともと大人しい子だったから、控えめで大人しいところはそのままだったけど、それでもしっかり自分の意見を言うし、笑うし、冗談も言う…
こんなに短期間に、鮮やかに生まれ変わった人、私は見たことないです。
もう誰も彼女の「うふ」を怖がらない…。
みんなでコタちゃんのクレープ食べに行こうツアーをしたことも。
グループ関係なく、クラスの半分以上の女子が参加しました。
コタちゃんは大忙しでクレープを焼いたあと、おばちゃんの粋なはからいで休憩をもらい、みんなと一緒にクレープを食べたのでした。
(陸上部メンバー(私も)は部活でいけなかった…)
もうコタちゃんがポツンになることなんかなかったし、バイトに加えてボランティア活動をしたり、コタちゃんは自力で交友関係を広げてもいきました。
コタちゃんは本当に例外中の例外とは思いますが、人は本当に変わることができるんだなという強烈な経験でした。
もちろん100%彼女の力で、私はひどいことしただけだったけど…。
よくしゃべるようになったコタちゃんは、意外とちゃっかりしたとこがあったり、ちょっと無責任だったり、いろんな面がもちろんあったけど
もう、コタちゃんが怖いとか嫌いとか思うことはありませんでした。
でも時々思い出す…
あのとき、私たちのところに戻ってきてくれたことは、私たちにとってとんでもない救いだったんですよね。
もしあのままコタちゃんと話すことなく卒業してたら、きっと一生ずっと思い出すんですよ。
そしてずっと届く当てのない謝罪をし続けることになる。
そしてそのたびに自分が嫌いになる。
まあ、今でもこうやって思い出すんだけど(笑)
でも、謝罪を受け取ってくれる相手がいるというのは、すごく幸運で幸せなことだったと思うのです。
コタちゃん(とカオリちゃん)とは結局3年間クラスが同じで、修学旅行も卒業遠足もずっと一緒でした。
前の話で、
人はそうそう変わるもんじゃない、と書いたけど、彼女のような例もあるんですよね。
本気で目指せば、できないことではない、とも思っています。
でも、その「本気で目指そう」と思うことがいちばん難しいのかも…。
コタちゃんは本当にすごい。
私自身、同じコミュニティに身を置きながら自分を変えるというのがものすごく苦手です(というか難しいよね!?)
なので、ほんとこのときのコタちゃんは今でも本当に尊敬してるし、感謝しています。